最先端の技術を使った東京電機大学中高のコンピュータグラフィックス教室

みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

先日、東京電機大学中学校・高等学校(東京都小金井市)で行われた小学生向けの講座

「コンピュータグラフィックス教室」を見学させていただきました。講師は、東京電機大学工学部 情報通信工学科 教授 長谷川誠先生と、画像処理研究室所属の高橋尚紀さん(大学4年生)です。画像処理研究室では、映像中の文字情報を文書データとして認識する方法や、指紋認証や顔認証、三次元データの作成、活用についてなどの研究が行われています。昨年度、東京電機大学中学校・高等学校で行われたオルセースクールミュージアムでも、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の3D画像を展示していただき、話題となりました。

 

今回の講座も定員20名の募集でしたが、申し込みサイトがオープンしてすぐ、申し込みが殺到し、定員に達してしまった、大人気講座です。

 

今回作成するのは、こちら。石膏像の三次元CGです。

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写真だと少しわかりにくいですが、画面上でマウスを動かすことで、なんと360度の方向から石膏像を見ることができます。

 

このCGのすごいところは、特別なカメラを使わず、iPadスマートフォンで撮影した動画を使って作られているところです。

 

「通常の3次元専用カメラはレーザーが被写体にあたり、跳ね返ってくる原理を使って撮影をしています。高級車などには、3次元カメラがついていて、走行中の風景を3次元で撮影しながら走っています。例えば人が飛び出してきたとしても、その人までの距離を測ることができるので、衝突事故を防ぐことができたり、他の車との距離を確認したりしながら、自動駐車をすることを可能にします。ただ、そのカメラの価格がとても高いため、なかなか一般の自動車には使えませんし、その他の生活シーンにも導入しづらいのが現状です。

 

今回の三次元映像撮影は、三角測量の原理を応用しています。スマートフォンタブレットで、物体と等距離を保ちながら様々な角度から撮影することで、カメラと物体の距離を推測し、その物体の凹凸(すなわちカメラとの距離)もわかるのです」と長谷川先生から説明がありました。

 

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現在多くの人がスマートフォンを持っています。それを使って、新しい設備を購入することなく三次元映像の撮影が実現できるというのは、本当にすごいことですね!まだこれは研究段階ですが、近い将来、実用化されるそうです。

 

「例えば何かが欲しい!となった時、スマートフォンで撮影することで、3次元の形が手に入り、それを3Dプリンタでプリントすることでつくれてしまう、という時代がすぐにやってくると思います。3Dプリンタが一家に一台置かれるようになる時代もすぐにやってきますし、その前にまずコンビニエンスストアに3Dプリンタが導入されるでしょうね。今日これからそれを体験してもらって、こんなことができるんだ!と感じながら、じゃあどんな風に使えるんだろう、と考えながら作業を進めてみてください(長谷川先生)」

 

最先端の技術を使うことで、これからやってくる時代を先に体験できる!子ども達も目を輝かせています。

 

さて、いよいよ体験。高橋さんが詳細な手順を説明してくださいます。

今回の体験は、

・物体の動画撮影

・コンピュータソフトウェア(DVDVideoSoft Free Studio)を用いた動画からの静止画抽出(100枚)

・コンピュータソフトウェア(Agisoft PhotoScan Standard)を用いた三次元CG製作

という手順で行います。

 

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まず、隣室に移動し、被写体の撮影を行います。

 

■物体の動画撮影

まず隣室に移動し、物体の移動撮影を行います。2つの被写体を、iPadを使って撮影します。できるだけ水平を保ちながら、右から左へゆっくり動きます。

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■動画の取り込み

次に、コンピュータ室に戻り、動画をパソコンに取り込み、保存します。

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■静止画抽出

DVDVideoSoft Free Studioの機能を使い、動画を100の画像に分割していきます。

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■三次元

いよいよ三次元CGへの変換です。Agisoft PhotoScan Standardの機能を使うと、取り込んだ写真から三次元CGをつくってくれるので、範囲を再指定するなどの調整を行い、三次元CGを完成させます。

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骨格標本でCGを作ったお子さんもいました。

 

3-4名で1台のコンピュータを使い、わからないところは中高のコンピュータ部の生徒さん達に聞きながら1人ずつCGを作成したのですが、それほどサポートを必要とせず、自分で進められるお子さんが多かったです。興味がある分野だけあり、理解が早いのかもしれませんね。CGが出来上がると、みなさんとてもうれしそうでした。

 

「こういった取り組みをきっかけとして、工学に興味がある人を増やしたいですね」と、長谷川先生。工学を学び、研究を進めていくには、知識を身に付けるだけでなく、今日のように実際にやってみることがとても大切だそうです。手を動かしてみて、うまくいかないという悔しい体験をし、もう一度やってみる、という試行錯誤が、エンジニアを成長させるそうです。参加者のみなさんはとても熱心に取り組んでいたので、これをきっかけに工学の道に進む方もいるかもしれませんね!楽しみです。

 

見学をさせていただき、ありがとうございました。