大人も子どもも、私たちはいつも評価の目にさらされているような気がします。「あの子はかしこい」「あの子はできない」「あの人は能力が高い」「あいつは使えない」などなど。ではそれはどんなところを指して言っているのでしょうか。その前に、その人が能力を発揮できる環境にあるかどうかも前提としていますか。
本日ご紹介するのは、企業などの組織開発に長年たずさわってこられた勅使川原 真衣(てしがわら まい)さんが書かれた「『能力』の生きづらさをほぐす」です。ドルトン東京学園の安居校長に教えていただきました。
著者:勅使川原 真衣さん
出版社:どく社
出版日:2022年12月
組織開発の専門家として、人の能力を様々な方法で測ってきた著者が、能力の正体とは何かにせまります。亡くなった母が社会人の息子、高校生の娘にその解説をする、というちょっと変わった設定なのですが、専門的な話も親子の会話を通して読みやすくなっています。
大学で評価された人が社会に出ると「つかえないやつ」と言われる、部署を移動したとたん、評価が180度変わる、それはなぜなのか。まだ測れていない能力があるのかもしれないと新しい商品を開発する人材開発業界、自分は発達障害かもしれないと感じ診断を受ける個人、実はみんな「能力」にふりまわされているのだなと本書を読んで感じました。でもちょっとまって、能力とはそんなに信頼できるものなのか、人を分けることに意味があるのか、と実例を出しながら、著者は疑問を投げかけます。そして、その答えがわかることがゴールなのかどうかも。母から子どもたちへ向けられた、嘘のないメッセージを読んでいるうちに、なぜか少し、心が軽くなります。
自分にも、子どもにも、正解らしきものやよりどころを求めてしまっているな、そう感じたら、読んでみていただきたい一冊です。
(清水)