最先端の技術を使った東京電機大学中高のコンピュータグラフィックス教室

みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

先日、東京電機大学中学校・高等学校(東京都小金井市)で行われた小学生向けの講座

「コンピュータグラフィックス教室」を見学させていただきました。講師は、東京電機大学工学部 情報通信工学科 教授 長谷川誠先生と、画像処理研究室所属の高橋尚紀さん(大学4年生)です。画像処理研究室では、映像中の文字情報を文書データとして認識する方法や、指紋認証や顔認証、三次元データの作成、活用についてなどの研究が行われています。昨年度、東京電機大学中学校・高等学校で行われたオルセースクールミュージアムでも、ルノワールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」の3D画像を展示していただき、話題となりました。

 

今回の講座も定員20名の募集でしたが、申し込みサイトがオープンしてすぐ、申し込みが殺到し、定員に達してしまった、大人気講座です。

 

今回作成するのは、こちら。石膏像の三次元CGです。

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写真だと少しわかりにくいですが、画面上でマウスを動かすことで、なんと360度の方向から石膏像を見ることができます。

 

このCGのすごいところは、特別なカメラを使わず、iPadスマートフォンで撮影した動画を使って作られているところです。

 

「通常の3次元専用カメラはレーザーが被写体にあたり、跳ね返ってくる原理を使って撮影をしています。高級車などには、3次元カメラがついていて、走行中の風景を3次元で撮影しながら走っています。例えば人が飛び出してきたとしても、その人までの距離を測ることができるので、衝突事故を防ぐことができたり、他の車との距離を確認したりしながら、自動駐車をすることを可能にします。ただ、そのカメラの価格がとても高いため、なかなか一般の自動車には使えませんし、その他の生活シーンにも導入しづらいのが現状です。

 

今回の三次元映像撮影は、三角測量の原理を応用しています。スマートフォンタブレットで、物体と等距離を保ちながら様々な角度から撮影することで、カメラと物体の距離を推測し、その物体の凹凸(すなわちカメラとの距離)もわかるのです」と長谷川先生から説明がありました。

 

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現在多くの人がスマートフォンを持っています。それを使って、新しい設備を購入することなく三次元映像の撮影が実現できるというのは、本当にすごいことですね!まだこれは研究段階ですが、近い将来、実用化されるそうです。

 

「例えば何かが欲しい!となった時、スマートフォンで撮影することで、3次元の形が手に入り、それを3Dプリンタでプリントすることでつくれてしまう、という時代がすぐにやってくると思います。3Dプリンタが一家に一台置かれるようになる時代もすぐにやってきますし、その前にまずコンビニエンスストアに3Dプリンタが導入されるでしょうね。今日これからそれを体験してもらって、こんなことができるんだ!と感じながら、じゃあどんな風に使えるんだろう、と考えながら作業を進めてみてください(長谷川先生)」

 

最先端の技術を使うことで、これからやってくる時代を先に体験できる!子ども達も目を輝かせています。

 

さて、いよいよ体験。高橋さんが詳細な手順を説明してくださいます。

今回の体験は、

・物体の動画撮影

・コンピュータソフトウェア(DVDVideoSoft Free Studio)を用いた動画からの静止画抽出(100枚)

・コンピュータソフトウェア(Agisoft PhotoScan Standard)を用いた三次元CG製作

という手順で行います。

 

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まず、隣室に移動し、被写体の撮影を行います。

 

■物体の動画撮影

まず隣室に移動し、物体の移動撮影を行います。2つの被写体を、iPadを使って撮影します。できるだけ水平を保ちながら、右から左へゆっくり動きます。

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■動画の取り込み

次に、コンピュータ室に戻り、動画をパソコンに取り込み、保存します。

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■静止画抽出

DVDVideoSoft Free Studioの機能を使い、動画を100の画像に分割していきます。

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■三次元

いよいよ三次元CGへの変換です。Agisoft PhotoScan Standardの機能を使うと、取り込んだ写真から三次元CGをつくってくれるので、範囲を再指定するなどの調整を行い、三次元CGを完成させます。

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骨格標本でCGを作ったお子さんもいました。

 

3-4名で1台のコンピュータを使い、わからないところは中高のコンピュータ部の生徒さん達に聞きながら1人ずつCGを作成したのですが、それほどサポートを必要とせず、自分で進められるお子さんが多かったです。興味がある分野だけあり、理解が早いのかもしれませんね。CGが出来上がると、みなさんとてもうれしそうでした。

 

「こういった取り組みをきっかけとして、工学に興味がある人を増やしたいですね」と、長谷川先生。工学を学び、研究を進めていくには、知識を身に付けるだけでなく、今日のように実際にやってみることがとても大切だそうです。手を動かしてみて、うまくいかないという悔しい体験をし、もう一度やってみる、という試行錯誤が、エンジニアを成長させるそうです。参加者のみなさんはとても熱心に取り組んでいたので、これをきっかけに工学の道に進む方もいるかもしれませんね!楽しみです。

 

見学をさせていただき、ありがとうございました。

アートが身近にある教育環境(トキワ松学園中学校高等学校)

みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

先日、東京都目黒区にある女子校、トキワ松学園中学校高等学校を訪問させていただきました。

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トキワ松学園中学校高等学校は、教育の3つの柱が「思考力教育」「国際力教育」「美の教育」となっており、高校からは美術デザインコースがある他、中学でも美術教育に力を入れていらっしゃいます。

芸術は人生を豊かにするすばらしいもの、というお考えのもと、中学・高校では

「生徒の事象を見つめる『目』」「作り出し表現する『手』」を育てることを目標とされています。

入り口の吹き抜けには、9月に行われたトキワ祭の展示ポスターが飾られていました。

 

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立体作品が多く、それぞれ工夫が凝らされています。

また、校舎の地下1階にはギャラリーがあり、横浜美術大学所蔵の作品や、大学生の作品が飾られています。

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見学させていただいた際には、野菜や果物をモチーフとした作品が飾られていました。

 

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カフェにも、作品が展示されています。

展示は、定期的に入れ替えをされているそうなので、生徒さんたちは様々な作品を楽しむことができます。

 

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そしてこちらは、校長先生と横浜美術大学の先生が企画し、生徒さんたちに楽しんでもらおうと、地下1階につくられた一角です。インパクトがありますね!生徒さんたちが自由に使ったり、撮影されているそうです。インスタ映え間違いなしですね!

身近に常にアートがある環境、とても素敵だと感じました。

見学させていただき、ありがとうございました。

 

学校のホームページ内にも「アートギャラリー」があり、生徒さんたちの作品を見ることができますので、ぜひご覧ください。

 

トキワ松学園中学校高等学校

 

東京女学館 館長・理事長 福原孝明先生 インタビュー(オルセースクールミュージアム開催に向けて)

2019年3月、東京女学館中学校・高等学校で、オルセースクールミュージアムが行われます。東京女学館・館長・理事長、中学校・高等学校 校長の福原 孝明先生に、開催の目的、展示の見どころについて、お話を伺いました。

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■開設130年の周年事業としてオルセースクールミュージアム開催を決められた経緯、きっかけについて教えてください

開催を決めた一番の理由は、東京女学館の創立の時期と、展示する作品が描かれた時期が重なることです。19世紀後半は、フランスでは産業革命という時代が大きく変わった時期にあたり、同時に近代絵画の幕開けが、印象派によってもたらされた時代でした。また、日本ではその頃、近代の女子教育の幕開けが、女子校の設立という形でもたらされていました。毎年11月に行っている創立記念式典や、入学当初に私が担当するスクールアイデンティティの授業でも、開校当初のことは伝えていますが、本展示を通して、あらためてその時代について、本校の生徒たちに想起してもらいたいと思っています。

 

またその時代、印象派の画家たちは日本の文化に憧れ、描き方に取り入れていましたし、日本には西洋の文化や生活様式が入ってきて、急激に変化をしていきました。生徒たちはもちろん、卒業生のみなさまや地域の方、来場される方みなさまに、本校の歴史を通して、その変化を両面から見て楽しんでいただければと思います。

 

■本展覧会は2部制となっていて、第1部が「『ローヌ川の星降る夜』が生まれた時代」、第2部が「19世紀と女性たち」となっていますね。第1部のテーマとしてフィンセント・ファン・ゴッホの「ローヌ川の星降る夜」を選ばれたのはなぜですか。

ローヌ川の星降る夜」が描かれた1888年は、東京女学館が設立された年だからです。

本校の設立の背景には、不平等条約を改正し、欧米諸国と対等な関係を築きたいという願いがありました。これは政府だけでなく経済界はもちろんのこと日本国全体の課題となっていて、そのためには男性だけでなく女性の育成も欠かせないと、多くの人が感じていました。欧米婦人と対等に交際できる日本婦人を育成するために、国際基準の女子教育を受けさせたい。これが、東京女学館の設立に関わった人々の想いだったのです。東京女学館は、そのような想いを持つ日本のトップランナーたちの集まり、女子教育奨励会によって、女性の高等教育を実現するために1888年9月11日に設立されたのです。

 

それが、ゴッホの「ローヌ川の星降る夜」が描かれた1888年9月です。女学館は、この年7人のイギリス人教師を迎えて開校しました。彼女らは、1888年1月26日にイギリスを発ち、3月22日に日本に到着し、9月の女学館の開校に備えました。おそらくゴッホが「ローヌ川の星降る夜」を制作していたときと重なり、不思議な縁を感じます。そして、女学館が開校した頃の星空を「ローヌ川の星降る夜」を通して見ることができることも楽しみです。

 

第1部の会場には、本校の開校当初の時代がわかるパネル展示を行います。生徒によるパネルの企画もしておりますので、是非ご覧ください。

それから、現在展示の準備を進めているのが、本校に約45年間在職して英語を教えた英国人教師、ドロセア・E・トロット先生の展示コーナーです。トロット先生は、本校の制服、女学館文字と呼ばれるブロック体制定にも関わられています。英語の指導は厳しかったそうですが、生徒達にはとても慕われていて、帰国の際には多くの生徒が空港に見送りに行きました。本校の歴史について、この展示からも見ていただけると思います。

 

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ドロセア・E・トロット先生



 

 

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制服が忠実に再現されたリカちゃん人形



 

■第2部は「19世紀と女性たち」がテーマとなっています。この展示を通して、来場者および生徒さん達に伝えられたいのはどのようなことですか。

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第2部では、19世紀後半の女性の生き方を感じてもらえるような絵や、女性画家によって描かれた作品の展示をいたします。19世紀後半は、現代と比べると、女性が男性と同じ職業を選択したり、活躍をするのは難しい時代でした。こちらの鑑賞を通して、この時代の女性の生き方を感じ、女性の自立について考えてもらえれば、と思います。

 

東京女学館も女子教育とはいいながらも、開校当初は良妻賢母のための教育でした。様々な分野で活躍する夫をいかに支え、家庭を盛り立てていくかが自分の役割だと認識していた生徒が大半でした。しかし、1980年代には生徒の意識はすっかり変わっていました。それまでは本校併設の短期大学に多く進学していましたが、次第に目指したい学部が法学部、経済学部、医学部、薬学部、理学部などに変化していき、1980年代には、大半がそのような進路選択になっていました。その流れを受けて、創立110年に教育目標に「人と社会に貢献する」という言葉をいれ、「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」としました。高い品性と人間性を備え、さらに男性とともに社会に貢献する人に育ってほしいという願いを込めました。また、本校では20年前から「インクルーシブ リーダーシップ」を育てる教育を行っています。中高6年間の様々な体験を通して、自分たちが力を合わせて、実現していくことを大切にしています。

 

そのような生徒達が、展示を見て、どのように感じるかも楽しみですし、ご来場のみなさまにも、時代の転換期と言われる今だからこそ、あらためて女性の生き方について考えていただければと思います。

 

■生徒さんたちによる企画展示もありますね。

 非常にうれしかったのは、美術選択の生徒たちが、実行委員長、副委員長をやりたいと手を挙げてくれたことです。我々が目指す教育について、生徒が理解して、自ら動いてくれるのは、本当にうれしいことです。展示やイベントなど、たくさんの企画アイディアが出てきています。その企画が成功することを期待するとともに楽しみにしています。

 

■今回の企画をきっかけに、貴校をはじめて訪れる方もいらっしゃると思います。企画の内容はもちろん、貴校について知ってもらいたいこと、伝えたいことはありますか。

ミロや、マチス等のリトグラフが常設されているとともに、美術の授業で描いた生徒の作品が館内のいたるところに飾ってあり、生徒の感性や情操を豊かに育んでいます。そのような環境を知っていただくと共に、この公開を機に近隣にお住まいのみなさまにも多数ご来場いただき、女学館の生徒達や学校についてより深くご理解いただくことで、今後はいっそう深く地域のために関わっていく、はじめの一歩としたいと思います。

 

また、生徒の自主企画に加え、生徒たちがアートコンシェルジュとして、みなさまに絵画について説明をすることになっています。学校説明会や文化祭とは少し違う普段の雰囲気を、生徒の様子を通じて感じていただければと思います。お子様たちも楽しめる企画もたくさん準備をしていますし、美術館よりはゆったりと見ていただけると思いますので、ぜひ、お子様と一緒にご来校ください。

 

 東京女学館には他にも見どころがたくさんあります。ぜひ実際にお越しになって、ご自身の目でたくさんの発見をしてください。

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アンネのバラ委員会と理事長先生により育てられているアンネのバラ

 

ヨコハマアートサイト2018 会社まるごとギャラリー

 

こんにちは。私学妙案研究所の岡田です。長かった暑い夏が終わり、芸術の秋がやってきましたね。さて先日、横浜市金沢区で行われている「会社まるごとギャラリー『1+1=10!?』展」を見学させていただきました。期間限定で社内にアート作品を展示し、ギャラリーとして一般の方達にも開放するという企画です。

 

今回で6回目となるこちらの展示会は、横浜市地域文化サポート事業・ヨコハマアートサイト2018の助成も受けています。今回の「1+1=10!?」展のテーマは「コラボレーション」だそうです。仕事も遊びも、みんな力を合わせたら1+1+1=10くらい面白くなる!というイメージです。

 

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会社まるごとギャラリーではアーティストに加わってもらい、いくつかの協力企業とのコラボレーションにより、企業の商材や廃材を使ってアーティストが作品制作を通し、表現する展示会です。参加企業でそれぞれ会場があり、それぞれ展示作品があるのですが、今回は山陽印刷株式会社さんの展示会場にうかがいました。

 

山陽印刷株式会社は2013年からこの会社まるごとギャラリーを開催し、また同じ金沢区の企業とコラボレーションし、周辺地域の企業みんなで盛り上げてきた、この企画の中心的存在の会社です。

 

 作品の一部をご紹介いたします。まずは社長室です。デスクの上にもたくさんの展示がされています。毎年この時期、社長は別のところでお仕事をされるとのことです。

 

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それからバーカウンター、廊下、会議室、和室、展示コーナーなど会社内のいたるところに作品が展示されており、会社という働く場所という日常と、美術作品を鑑賞するという非日常が混ざりあった不思議な空間となっていました。

 

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作品の上にライトが吊るされていて、ライトを押すと立体的な影が映る作品です。

 

他社の作品も展示されています。写真はアーティストと鶴見金網株式会社さんとのコラボ作品です。

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また、企業だけでなく、大学とのコラボレーション作品も展示されています。

 

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山陽印刷株式会社さんは1990年に現在の横浜市金沢区福浦に移転しました。当時、会社の周りは何もない広場のような場所であったため、会社を移転するにあたり、会社だけれど、バーカウンターや展示コーナーを作り、会社で楽しく働けるようにと遊び心のある会社にし、周辺地域の方にも足を運んでいただき、さらには芸術にも触れていただけるような活動を行いたいという思いから会社まるごとギャラリーが生まれたそうです。

社内には、今回の「1+1=10!?」展の作品はもちろんのこと、過去に行われた会社まるごとギャラリーの作品も多数展示されています。ギャラリーツアーやワークショップも行われるそうですので、この機会に訪れてみてはいかがでしょうか。

 

↓横浜アートサイト 会社まるごとギャラリー2018「1+1=10!?」展の開催概要はこちら

会社まるごとギャラリー2018「1+1=10!?」展 | アーティストネットワーク+コンパス

 

家庭でもできる小学生のプログラミング学習ーその3 ロボットやIoTの仕組みを使った学習ツール

 みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

過去2回のブログで、小学生のプログラミング学習の意味とビジュアルプログラミング言語を使った学習ツールについて、ご紹介しました。

 

今回ご紹介するのは、ロボットやセンサなどを使った学習ツールです。

PC内で作ったコマンドで実際の物を動かしたり、センサを使って得たデータを、PC内で活用したりといったことができるものです。

ロボット教室などで使われているのが、こういったツールです。

 

■m-Bot(エムボット)

store.makeblock.com

 

m-Botとは、Makeblock社が開発した、教育用のロボットです。arduinoという、基盤(プログラムしたものを実際に動かすための小さなコンピュータ)と、センサ(超音波センサ、光センサ、ライントレースセンサ)、モーターを組み合わせた小型ロボットで、スクラッチに似たビジュアルプログラミング言語で作った動きを、実際に動かしてみることが可能です(センサの設定もできます)。

このタイプのロボットはいろいろとありますが、m-Botが面白いのは、自分で組み立てる部分があることです。はんだ付けなどの技術は必要ありませんが、タイヤがついたロボットに、自分でセンサや基盤をつけることで、ロボットの構成要素について知ることができます。スクラッチがある程度使いこなせるようになったら、チャレンジしてみると面白いと思います。arduino言語でも動かすことができるので、arduinoの入門としても良いと思います。

 

 

■little Bits(リトルビッツ)

www.littlebits-jp.com

little Bitsとは、電子回路をブロックのように組み合わせることで、電子工作の基礎知識が無くても電子工作を楽しめるブロックです。本来であれば、基盤の構造を知り、接続パーツを調べ購入し、はんだ付けをして、という手順を踏まなければできない電子工作を、パーツをマグネットでつなげるだけで行えます。

パーツは、POWER(電源)、INPUT(ボタン、スイッチ、センサ)、WIRE(回路の分岐やブルートゥース、USBなどとの接続)、OUTPUT(ブザーやライト、モーター)の4つで、それぞれ色分けされています。

 

電子回路って、ざっくりと説明すると、電源が必要で、ボタンを押したりセンサーでスイッチを押すなどのアクションがあり、その結果を(プログラムをはさんだりはさまなかったりして)なんらかの動きとして示す、というものなのですが、パッケージ化されてしまうと、よくわからないですよね。little Bitsは、それを理解するためのキットと言えます。

 

先に紹介したmBotのような学習用ロボットに近いキットも販売されていますし(Blue Tooth接続して動かせるものもあります)、必要なパーツを買い揃えることもできます。arduinoパーツが発売されるなど、今後の展開が楽しみなツールです。

 

■koov(クーブ)

www.sonyged.com

 

ソニーグローバルエデュケーションが開発した、オリジナルのロボットをつくれるキットです。little Bitsのような電子工作キットと、自由に形がつくれるブロック、パーツがあり、自分で形や動きを考えて、つくり、動かすことができます(アプリをダウンロードして、ビジュアルプログラミング、学習コマンドなど試せます)。ロボットレシピも公開されていますので、いくつかレシピどおりにつくってみて、その上でオリジナルをつくることも可能です。スターターキットが3万円後半と少し高めですが、ブロック工作が好きなお子さんが、その発展で電子工作に親しむという流れは、つくりやすいと思います。

 

 

■MESH(メッシュ)

meshprj.com

こちらは、IoT(Internet of Things)を学ぶのに、適した学習ツールだと思います。IoTとは、モノをインターネットでつなげて生活を便利にするツールのことです。色々なものにセンサーをつけ、その情報をインターネットを介してつなげることにより、自動でアクションを起こしたり、たくさんのデータをためて分析することで動向をつかんだりができるようになることです。

 

具体的には、例えば部屋に温度センサをつけておき、室温が28度を超えたら音声でお知らせしたり、人感センサを入り口に設置し、動きを察知したらメールでお知らせが来たりなど、生活の様々なシーンですでに使われています。

 

MESHを使うと、これからますます導入が増えるであろうIoTを、受身で使うだけでなく、仕組みを知って、自分で簡単に設計してみることができます。MESH自体はスイッチやセンサー、ライトなどがブロック化されたものです。それをアプリ上でビジュアルに組み合わせることで、オリジナルのIoTプログラムをつくり、動作させることができます。「LINE」など、メッセージアプリと組み合わせることも可能です。

 

普段生活で困っていることや、あったらいいなということを、自分で組み合わせを考えて、形にしてみてはいかがでしょうか。

 

■BOCCO(ボッコ)

www.ux-xu.com

ユカイ工学が開発した、IoTの技術を使って、在宅中の子どもの見守りをするロボットです。正確に言うとこちらは学習ツールではないのですが、MESHのようにセンサがブロック化していて、自分で設定をすることができるため、IoT理解のはじめの一歩としても、良いと思います。

 

センサは「振動」「鍵」「部屋」「人感」の4種類、アクションは、主にメッセージと音声です。例えば振動センサーをドアにつけておいて、センサーが反応したらBOCCOが「おかえりー」や「忘れ物ないかなー」などと言うようにしたり(メッセージはオリジナルで作成可能)、子どもに立ち入ってほしくない危険な場所に人感センサーをつけておいて、センサが反応したら「入っちゃだめだよー」と音声が流れたり、スマートフォンにメッセージが届くようにすることができます。

 

センサーをどう組み合わせれば何ができるかを、親子で話し合って設定しても良いですね(天気をお知らせしたり、メッセージをやり取りできる機能もあります)。

 

 

***

長くなってしまいましたが、いくつかの種類のロボット、IoT学習ツールをご紹介しました。ひとつ前にご紹介したビジュアルプログラミングの学習ツールは、無料で始められるものがほとんどですが、今回ご紹介しているものは、パーツやキットなどの購入が必要になります。ご家庭で始められるようにスタート価格が3万円台までのものに限定しました。まずは無料のプログラミングツールを試してみて、お子様の理解度や興味により、ロボットキットなどの購入を考えてみる、というのが良いと思います。

 

また、これらによりプログラミングや電子工作への興味が深まった場合、次の段階は実際にはんだ付けをしたり、自分でパーツをそろえたり、パーツをつくったり、プログラミングのコードを書いたりすることです。最初に書いたように、すべての子ども達がここに踏み入れる必要はないと思いますが、もっと学びたいという子ども達には、それぞれの学習ツールに発展系が準備されていますので、それらを入り口として「メイカー」を目指してもらえたらと思います。

 

↓過去の記事はこちらです。

s-goodidea.hatenablog.com

s-goodidea.hatenablog.com

 

家庭でもできる小学生のプログラミング学習ーその2 ビジュアルプログラミング言語を使った学習ツール

みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

前回のブログで、小学生のプログラミング学習の意味について、以下のようにまとめました。

1.試行錯誤をし、思考力を育てる

2.世の中に働きかけるためのツールとして使う

3.世の中を支えている仕組みについて知る

今回は、主に1,2に関わる学習ツールをご紹介します。

 

ご紹介するのは「ビジュアルプログラミング言語」を使った学習ツールです。

ビジュアルプログラミング言語とは、プログラムをテキストで記述するのではなく、例えば、「右に進む」「回転する」など、視覚的なオブジェクトを組み合わせることで、命令をつくる(プログラミングする)ことができます。ビジュアルプログラミング言語を使うことで、試行錯誤に集中することができるのです。同じくビジュアルプログラミング言語を使ったものでも、そのつくりにより、難度が異なりますので、いくつか試してみてはいかがでしょうか。

 

■Scratch(スクラッチ

scratch.mit.edu

MITメディアラボが開発したプログラミング言語学習環境です。ブロック型のコマンドで、プログラミングの基礎を学べます。日本語版がありますので、わかりやすく学べると思います。ブロックのつくりがきめ細かく、数値なども入力できるようになっていますので、かなり複雑なことができるようになっていますし、出来上がった作品をシェアするコミュニティもあります。

 

■Scratch Jr(スクラッチジュニア)

www.scratchjr.org

クラッチが少し複雑だと感じる方には、コマンドを少しシンプルにした、スクラッチJrがお勧めです。対象年齢が5-7歳となっています。

 

■プログラミン

www.mext.go.jp

文部科学省が提供している、スクラッチを基にしているプログラミングサービスです。お絵かき感覚で、すこし感覚的に使えるようにしています。対象は小学校高学年・中学生とありますが、スクラッチJrに近く、小学生低学年でも使える印象です。

 

以上のツールは、iPadでは使えない、もしくは使いにくいようです。なので、iPadで使いやすいもの2つをご紹介します。

 

■Codeable Crafts

Codeable Crafts

お絵かきツールでキャラクターをつくり、ブロック型のコマンドでキャラクターを動かすことで、デジタル絵本がつくれるツールです。スクラッチJr、プログラミンと構成がよく似ていて、iPadのアプリとして使うことができます。

 

■Swift Playgrounds

www.apple.com

こちらも、iPadのアプリです。アプリをつくるための言語「Swift」を、初心者でもわかりやすいようにビジュアル化して学べるものです。厳密に言うと、コマンドがブロック化しているわけではないのですが、ブロックとしてコマンドを選び、文字として表示される形なので、プログラム言語が書けなくても、使うことができます。

 

クラッチ、プログラミン、Codeable Crafts は、自分で自由につくってみるタイプのもので、Swift Playgroundsは、課題があり取り組むものと、自由につくれるものがあります。

課題スタイルに特化しているのが、次に紹介する、アルゴロジックです。

 

■アルゴロジック

https://home.jeita.or.jp/is/highschool/algo/index.html

こちらは、自分で作り出すというよりは、問題があり、ゲーム感覚でそれを解くというもの。プログラミングの基礎となるコマンドを組み合わせて問題を解くことで、プログラミングの基礎となる、アルゴリズムを学ぶというものです。中学校や高校の授業でも使われています。※こちらはiPadでは使えません。

 

レベルや方向性の違ういくつかを紹介させていただきました。

プログラミング教室でも使われていますが、ご自宅で、親子でチャレンジしてみるのも面白いのではないでしょうか?

家庭でもできる小学生のプログラミング学習ーその1 プログラミング学習の意味

みなさまこんにちは。私学妙案研究所の清水です。

2020年から小学校でプログラミング教育が必修化されます。プログラミングが学べる小学生向けの講座や教室も増えてきて、お子様の参加を検討されている保護者の方も多いのではないでしょうか。教室に通うと、継続的に学習が進められる、グループ学習ができるなどのメリットがありますが、コンピュータとインターネット環境があれば、無料で使えるプログラムやアプリがあったり、教材を個人で購入することもできますので、自宅でプログラミングを学ぶことも可能です。

 

今回はプログラミング教室でも使われているものを、どんなことが学べるのかも含めてご紹介していきます。

 

プログラミングを学ぶ意味

ご紹介に先立ち、小学生からプログラミングを学ぶ意味とは何か?について考えてみませんか。ここまでプログラミング教室が話題になると「早くプログラムが書けるようになっておかないと将来まずいのでは」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、おそらく、そんなことはありません。文部科学省有識者会議でも今回の小学校での必修化の目的は、プログラムが書けるようになることではないと言われていますし、私の周囲でプログラムを書くことを仕事にしている人たちからも「子どもの頃からプログラムを書ける必要はない」「プログラミングを嫌いになるくらいだったらむしろ小学生からやらないほうが良い」という声が聞こえてきます。

 

経済産業省が2016年に発表した「IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果」では、近い将来、日本での「IT人材」が不足するとされています。

 

http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/27FY/ITjinzai_report_summary.pdf

なので、IT人材の仕事としてのニーズは、今の子ども達が大人になる時はもちろんあると思います。ですが、小中高段階でそのためにプログラムが書けるようになっておかなければ、ということはなく、むしろ、IT分野に興味があり(嫌いでない)、仕事として選択する可能性がある人が増えることが求められています。

 

以上を踏まえると、プログラミング学習の意味としては以下が挙げられるのではないでしょうか。

■試行錯誤をし、思考力を育てる

-動きが確認しやすいツールを使い思考の結果を視覚的に確認する 

■世の中に働きかけるためのツールとして使う

-ゲームやアプリ、装置などをつくり、誰かに使ってもらうという経験をする 

■世の中を支えている仕組みについて知る

-IoTの仕組みやコンピュータの仕組みがわかるツールを使い、自分で設計してみる

 

つまり、プログラミング言語をマスターすることを主目的とするのではなく、学習ツールを使うことで色々と考えて試してみることを目的とするのが良いと思います。

前置きが長くなってしまいましたので、事例の紹介は次のブログでさせていただきますね!

 

参考サイト:

小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ):文部科学省